表題番号:2025C-397
日付:2026/01/29
研究課題相互行為的視点から紐解く「遊び」と「学び」:スケートボード文化を事例として
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 商学学術院 商学部 | 講師 | 八木 淳一 |
- 研究成果概要
- 初年度に当たる2024年は、主にフィールドにおける参加者との関係構築およびデータ収集に注力した。具体的には、国内大手企業であるPenny Skateboards Japanの代表者や、都内を拠点とするプロスケーター、スケートボード系動画配信者などにコンタクトを取り、研究協力を打診した。その結果、(1)ミニランプセッション、(2)初心者・中級者向けの講習、(3)河川敷でのスケーティングなど、幅広い場面においてデータ収集を行うことができた。2024年末に早稲田大学で開催されたデータセッション(CAN-Kanto)では、ミニランプセッションの映像データを提供し、多くの有益なフィードバックを得た。これらのデータを用いて作成した論文要旨は、米国人類学会(American Anthropological Association)2025年次大会に採択され、同年11月に米国ニューオリンズで開催されたパネル(“Touch and Aesthetics in Co-operative Action”)にて発表を行った。本発表では、ミニランプセッションにおいて、ベニヤ板という極めて日常的な資源がどのように「滑走可能(skateable)なモノ」として達成されるのかを分析し、こうした環境を整備する触覚的実践が、スケートボード文化の審美的側面の基盤を成していることを示した。本発表は、分析の展開および分野への貢献について高い評価を受け、児童の相互行為研究の第一人者を含む国内外の研究者との新たなネットワークの構築につながった。また、パネル参加者との継続的な意見交換や、現地の専門家との議論を通じて、スケートボード文化に内在する創造性や審美性についての理解を一層深めることができた。特集号の企画についても幾度か議論されたが、今回は各自の研究を継続することで合意に至った。現在は、本発表内容をもとに、査読付き国際学術誌への論文投稿準備を進めている。もちろん、今回の課題で「遊び」と「学び」の関係性の全容を解き明かせたとは言い難い。そこで今後の研究展開として、「国境を越えて移動する文化(translocal cultures)」として音楽とスポーツに再着目し、これまで筆者が用いてきた分析的枠組みに、地理学の視点を加えることを検討する。その一環として、本課題で収集したスケートボードのデータを、既存のデータセット(ブルースバンド、和太鼓、ムエタイ)と統合する。エスノメソドロジー・会話分析(EMCA)が強みとする微視的な質的手法を用いることで、これらの文化実践が相互行為を通じて参加者の身体に受肉化され、文脈に応じて再編成されていく過程を実証的に解明したい。