表題番号:2025C-394 日付:2026/04/01
研究課題西洋中世スコラ学における実践知の形而上学的位置づけに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 准教授 辻内 宣博
研究成果概要
 本研究においては,観想的知性〔真理の観想を目的とする〕と対置される実践的知性〔善い個別的行為実践を目的とする〕が取り扱う実践知〔具体的には,倫理学・家政学・政治学〕について,その形而上学的な布置を,13世紀の神学者トマス・アクィナスと14世紀の哲学者ジャン・ビュリダンとの比較を通じて検討した。
 両名共に,アリストテレス哲学を受容しており,基本的な枠組みとしては,アリストテレス的な位置づけ,つまり,観想知/理論知〔自然学・数学・形而上学〕と実践知とは,対象の在り方が原理的に異なるという見解を継承しつつも,他方で,これら両方の知を連絡させる段階においては,両者共に,それぞれ独自のアリストテレスからの逸脱/展開を見て取ることができた。
 具体的には,アクィナスにおいては,永遠法/神の摂理という次元において,観想知と実践知はその第一原理としては統合されることになる。他方で,ビュリダンにおいては,観想知と実践知は原理的に異なるままの姿勢が維持されつつも,観想知と実践知との関係に関しては,観想知よりも実践知の方がより貴く,より善いものであるという見解を提示する。両者のこうした独自の展開は,神学者と哲学者という違いというよりもむしろ,両者が根本的に支持する哲学的な枠組みの相違に起因すると考えられる。