表題番号:2025C-386 日付:2026/04/03
研究課題昭和初期の都市部における「野外教育」実践についての比較史的研究-地域性に着目して-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 大学院教育学研究科 教授 野口 穂高
研究成果概要
 本研究は、科研費基盤研究C(25K14730)と連動し、1930年代の都市部における学校衛生重視の林間学校を比較史的に分析した。具体的には、当時の実践の独創性を探るとともに、昭和初期の野外教育の特質や史的意義の究明を目的としている。本助成では、主に都市部の林間学校や健康教育に関する史料の調査・収集・分析を行った。
 成果としては、日本の栄養学研究に多大な功績を残し、大正期の林間学校・学校給食・健康教育の理念や実践に強く影響を与えた佐伯矩および佐伯が創設した日本栄養協会に関する史料を収集できた点が挙げられる。具体的には、栄養協会の創設や学校給食に関する史料や同協会が実施した栄養聚落と称する林間学校の史料を収集した。いずれも、佐伯および日本栄養協会の活動を実証するために重要な一次史料であり、大正期から昭和初期にかけての林間学校・学校給食・健康教育の発展において、佐伯や栄養協会の人々の活動がいかに影響を与えたのか、その内実や意義、歴史的課題を鮮明にすることが期待される。今後は、これらの史料の分析を進め、昭和初期の健康教育について、その実際や教育的な価値、歴史的な限界を明らかにし、科研費の研究課題の達成につなげたい。
 この他、科研費の課題と連動して、大正末期に国内で導入された「発育概評決定標準」の指標としての限界、学校における使用状況、当時の児童に及ぼした負の側面についての分析も行い、成果を学内紀要に発表した(詳細は科研費の報告書を参照)。結果、①「発育概評決定標準」の導入により、本来は虚弱児童とは言えない多数の児童が「身体虚弱児童」と認定され危機的状況であると社会的に認識されたこと、②身体虚弱児童を対象とする教育活動の需要が喚起され、虚弱児童向けの林間学校が流行したこと、③養護を中心とする林間学校の目的と児童の身体状況が十分に一致しておらず、実践の質的面では課題が残ったこと、を明らかにした。