表題番号:2025C-359
日付:2026/03/13
研究課題火星環境下における含水鉄リン酸塩の圧力応答と水の役割の解明
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 教育・総合科学学術院 教育学部 | 准教授 | 飯塚 理子 |
- 研究成果概要
本研究では、火星の過去の環境の有用な指標として特に重要視されている、含水鉄リン酸塩giniite [化学式Fe(II)Fe4(III)(PO4)4(OH)2・2H2O] に着目し、その物性評価と火星内部を見立てた高圧条件下での相安定性を調べた。合成giniiteは、天然giniiteと異なりFe(III)に富み、直方晶系をとることが知られているが、結晶学的な詳細は明らかになっていない。本研究では、giniiteを水熱合成し、X線回折やラマン分光測定により生成物を評価・同定した。また水熱合成における温度とその保持時間の条件を変えて適切な合成条件を見極め、生成物の結晶形状と温度・時間との関係を明らかにした。さらに合成したginiiteをダイヤモンドアンビルセルに圧媒体とともに封入し、室温高圧下での相の安定性や脱水の有無を調査した。水素結合に由来する振動モードは圧力とともにブロード化した。P-O結合の振動モードは6−8 GPa付近で圧力による高波数シフトが停滞したことから、結晶構造中のP-O結合が硬くなったことが分かった。放射光X線を用いたX線回折測定の結果、高圧氷の出現から高圧下で脱水した可能性が示唆された。このように、giniiteの相安定性は室温下でも圧力で変化することが明らかになった。今後は、giniiteの結晶学的情報を特定するために単結晶を育成して単結晶X線回折を行うこと、また、高圧下での水素結合の圧力応答を精査するために中性子回折測定を行うための重水素化物の合成を試みる予定である。
本研究は、giniiteが実際に火星に存在していたとして、鉱物学的な情報の更新と火星深部における安定性と水の振る舞いについての課題を実験室的に解決し、結晶化学的な理解から火星深部における水の行方を知る一助になることが期待される。