表題番号:2025C-356
日付:2026/04/03
研究課題新全集版を使用した、イマヌエル・カントの批判期の著作における「反省」作用の包括的検討
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 文学学術院 総合人文科学研究センター | 助手 | 道下 拓哉 |
- 研究成果概要
- 本研究では、カントの批判期の著作における「反省」作用の包括的検討を行なった。従来の研究では、「反省」作用は〈自発性の働きの自覚〉のための契機として論じられてきた。これに対して本研究では、こうした従来の研究成果を踏まえつつ、「反省」作用と受容性(感性)との関係に焦点を当て、『純粋理性批判』「超越論的感性論」(以下「感性論」)を「反省」という観点から多角的に再検討した。なお、本研究期間中に刊行が予定されていた新全集版の刊行遅延により、当初予定していた新全集版(特に『イェシェの論理学』)の知見の取り入れはかなわなかった。研究成果は以下のとおりである。第一に、「感性論」冒頭の質料形相論的説明(A20/B34)の位置付けを検討した。「感性論」の「究明」という手続きは、与えられた概念を諸徴標へと分解し比較することで概念を判明にする営みだが、その「比較」の契機において「反省概念」としての「質料と形式」が機能すると主張した。言い換えれば、「感性論」を支配する質料形相論的説明を、「反省」作用を用いて感性的表象(の概念)を分解・比較するという構造の現れとして解釈した。この研究成果は日本哲学会第84回大会(於立正大学)にて発表した。第二に、「形而上学的究明」における空間時間の先行性の主張を、「反省」を主要契機とする概念分析を通じて得られたものとして解釈可能であることを主張した。Smyth (2024)の「トップ・ダウンアプローチ」を援用し、従来ボトムアップ的に(つまり、何らかの直知によるものと)しか読めないとされてきた第一・第二契機についても、我々がすでに使用している空間時間概念を反省的に分析するという手続きによるものとして解釈可能だと主張した。この研究成果は早稲田大学哲学会春季研究フォーラム(於早稲田大学)にて発表した。第三に、「形而上学的究明」について、一見、少なからぬ直観への訴えや概念の構成を含むように見えるものの、これを「講述的証明」(これは『純粋理性批判』「超越論的方法論」の術語である)として理解する限り、概念にのみ基づく論弁的で総合的な認識として解釈可能であると主張した。この解釈を踏まえることで、「感性論」における「反省」作用の役割が明確なものとなる。この研究成果は第385回カント研究会(於法政大学)にて発表した。以上の研究を通じて、「感性論」における「反省」の機能が明らかにされ、「反省」作用が自発性(=悟性)のみならず受容性(=感性)の働きを記述するためにも不可欠であることが示された。