表題番号:2025C-355 日付:2026/03/18
研究課題古代エジプト社会における儀礼の実践
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 講師 山崎 世理愛
研究成果概要
 本研究では、古代エジプトの葬送儀礼がいかに変化し、当時の社会のなかでいかなる機能を果たしていたのかを明らかにすることを目的とした。儀礼祭祀はしばしば宗教的観念と結び付けて理解されるが、実際には社会的・経済的行為としての側面も有している。しかし、これまでのエジプト学においては、儀礼は主として精神文化の文脈で論じられる傾向が強く、同時代社会との関係や相互作用については十分に検討されてこなかった。また、個別事例に基づく研究が中心であり、儀礼の通時的変化や葬送儀礼全体を俯瞰する視点は必ずしも十分とは言えない。
 そこで本研究では、国家再形成期にあたる中王国時代の葬送儀礼に着目し、儀礼の社会的役割を検討した。具体的には、食糧以外の多様な器物を死者に捧げる器物奉献儀礼に注目し、その構造が時期によっていかに変化するかを追った。その結果、各時期における儀礼の構成や手順が復元され、特に前段階との差異が明らかになった。また、そうした変化を生み出す要因として、省略・埋め込み・復古といった規則性を抽出することができた。さらに、これらの変化の背景には、社会的地位の再生産や維持といった戦略的意図が存在した可能性が示唆される。
 加えて、本研究の視野を広げるため、国内外の研究者を招いて一般公開の公開講演会・研究セミナーを開催した。時代や対象を越えた議論を通じて、エジプト学における儀礼研究の今後の展望についても検討を深めることができた。