表題番号:2025C-354 日付:2026/02/08
研究課題日本古代寺院の定量分析研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 助手 高橋 亘
研究成果概要
 前年度に科研費基盤研究(C)およびその他の学外研究費に申請を行ったが、いずれも不採択であったため、本特定課題を取得して研究を継続・発展させた。本研究は、日本古代寺院における伽藍配置の特質を明らかにすることを目的とし、従来の類型論的・比較史的研究に加えて、寺院空間の視覚的構造に着目した点に大きな特徴がある。具体的には、GISを用いた可視領域分析を導入し、塔を中心とする伽藍配置と「見え方」「見られ方」との関係を定量的に検討した。
 前年度に取得した特定課題「日中古代寺院における伽藍配置の比較考古学的研究」では、中国・朝鮮半島・日本を含む東アジア全域の伽藍配置を比較し、日本においては仏殿と塔を東西に並置する「塔殿並置式」という独自の伽藍類型が成立していることを明らかにした。今年度の研究では、この成果を踏まえ、「塔殿並置式」伽藍において塔の配置意図をより具体的に検討するため、塔の視認性と伽藍構成との連動関係を主たる分析課題とした。
 その結果、塔は伽藍内のみならず周辺空間からも視認されやすい位置に計画的に配置されており、こうした視覚的特質が法隆寺式伽藍配置や法起寺式伽藍配置の成立に深く関与した可能性を指摘できることが明らかとなった。とりわけ、この傾向は「塔殿並置式」伽藍において顕著であり、塔が単なる宗教的モニュメントにとどまらず、王権・天皇権力を視覚的に強調し、寺院空間を通じて象徴化する装置として機能していた可能性を示す成果を得た。