表題番号:2025C-347 日付:2026/03/27
研究課題蔡大鼎『欽思堂詩文集』序文に見られる琉球漢文学に対する評価について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 紺野 達也
研究成果概要
  本研究課題は、近世末期の琉球において最大の漢文学者である蔡大鼎の『欽思堂詩文集』に付された清人の序文を対象として、そこに見られる琉球漢文学への評価を検討したものである。琉球漢詩文は近年、資料が陸続と“再発見”されてはいるものの、その中琉関係史における役割はなお明らかになっていない部分がある。特に、当時における中国側からの琉球漢文学に対する評価の諸相はほとんど解明されていない。そこで研究代表者は蔡大鼎の『欽思堂文集』の序文および関連する各資料を分析し、主に福州の人士が蔡大鼎個人のみならず、琉球漢文学およびその担い手に対してどのような認識を示し、いかなる評価を与えたのかを考察した。
  『欽思堂詩文集』の序においては、しばしば琉球が詩文に優れた人材の多い文雅な地として表現され、蔡大鼎はそのなかにおいて抜きんでた人物であると表現される。序文が当該詩文集の撰者および収録作品を賛美する傾向があることも考慮する必要があるものの、清朝側で琉球漢文学の何に注目すべきか、より正確に言えば何に注目することが求められていたのかを考える重要な材料となっている。一方で、具体的な作品についての言及は乏しい。特に、この『欽思堂詩文集』には琉球独自の風土を詠った作品も多く、また日本との関係を述べた作品が存在する点でも注目されるが、それらについてはほとんど等閑視されていることも明らかになった。
 現在はこれらの成果をもとに、蔡大鼎の他の詩文集に対する序文の内容と比較し、研究を進めている。特に同じ時期に刊行された『漏刻楼集』序文との比較によって、清人が琉球漢文学に対して注目した点、また注目をしなかった点なども確認されつつある。上記の研究の成果については、その一部を論文で報告している。別途、2026年度中に論文として公刊する予定である。