表題番号:2025C-336 日付:2026/03/04
研究課題石炭産業の生産職場における「自然」に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 講師 清水 拓
研究成果概要
 本研究は、石炭産業において労働者・技術者が「自然」にどう対峙してきたのかを明らかにすることを目的としたものである。石炭産業は資源収奪型産業であり、現場を知る関係者は、たびたび「自然相手の仕事だ」や「自然条件に左右される」といった表現を用いて、その生産職場の特徴を語る。本研究では、その「自然」が具体的に彼らの前にどのように立ち現れてくるのか、そしてそれをどう乗り越えようとしたのか、という点の整理を企図した。
 そのために以下の2点に取り組んだ。第一に、文献調査である。採鉱学の学術書や鉱山保安関係の法定資格のテキスト、石炭産業に従事した労働者・技術者による回顧録や自分史、ジャーナリストによるルポルタージュ、写真家による写真集等を渉猟した。
 第二に、インタビュー音源の二次分析である。報告者がこれまで炭鉱の技術史・職場史を捉えるために実施してきた太平洋炭砿、住友赤平炭砿、松島池島炭鉱のインタビュー音源を、「自然」との関係に関する語りとして捉えなおすべく、AI文字起こしソフトウェアを活用してトランスクリプトを作成した。なお、申請当初はインタビュー調査を実施予定だったが、既存のインタビュー音源の二次分析に切り替えた。
 これらの作業を通じて、テキスト上ではどのように「自然」との関係に言及されているかを整理した。そこでは、技術開発や現場作業の場面における不確実性が「自然」という語によって説明されていた。それにより、現場で働く労働者や技術者が「自然」にどう向き合ってきたのかの手がかりを得た。本課題の実施期間おいて、その進捗は膨大なデータの収集・整理にとどまり、本格的な分析にまでは至らなかったため、今後も継続して分析に取り組む。
 なお、これらの調査研究に関連する成果として、環境社会学会大会において「自然」をキーワードに炭鉱の職場史を描くうえでの分析枠組みと意義について発表した。