表題番号:2025C-335 日付:2026/04/01
研究課題1990年代における沖縄県の自治体外交と中台問題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 准教授 小松 寛
研究成果概要
近年、いわゆる「台湾有事」が安全保障上の懸念として浮上しているが、沖縄県はその勃発可能性の低減を目指して中国国および台湾との交流の強化を図る「自治体外交」を展開している。しかし、その歴史的経緯についての実証的な研究はいまだ十分になされていない。そこで本研究は1990年代の大田昌秀県政における中国および台湾の地方政府間交流の実態を、台湾側の「中琉文化経済協会」資料を含む一次資料への分析を通して検討した。90年代に着目する理由は、第3次台湾海峡危機(1996年)が発生した点で現在との共通性が見られることがある。さらに沖縄県と中国・福建省は97年に友好県省を締結するなど関係強化が図られた一方で、台湾の国⺠党は沖縄への1000億円投資構想を表明したが沖縄側の規制緩和が不十分とされ実現しなかったことなど、沖縄をめぐる中国と台湾の関係に注目すべき動きがあった。
上記の動向および沖縄と台湾側の交渉過程の分析結果は、2025年11月18日に開催された早稲田大学人文科学総合研究センター「過去・現在・未来をつなぐ社会構想と協働実践」部門主催の研究会にて「1990年代における沖縄県の自治体外交:沖縄県・福建省友好県省締結と第 3 次台湾海峡危機」と題して報告することができた。
また、本研究の前提として、台湾有事などの安全保障上の懸案に対して、軍事力による対処はどの程度有用なのかという根本的な問いについても検討する必要性に気づいた。そこで日本平和学会秋季研究集会(2025年11月2日)にて部会「『軍事的リアリズム』への批判的検討」に司会として参加し、軍事的合理性と政治的判断の関係性に着目しながら、「軍事的リアリズム」の持つ有用性と限界について議論を行った。なお当初の予定では沖縄県公文書館所蔵の「大田昌秀文書」の収集・分析を行う予定であったが、そこまで研究を進めることはできなかった。今後の課題としたい。