表題番号:2025C-327 日付:2026/02/05
研究課題英米圏の実験的テレビドラマにおけるインターメディアリティの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 助教 朴 夏辰
研究成果概要
本研究は、英米圏の実験的テレビドラマにおけるインターメディアリティについて、サミュエルベケットとデヴィッド・リンチのテレビ作品を中心に、、実験性と大衆性の接続のあり方を明らかにすることを目指した。とりわけ、リンチのテレビドラマを、従来の映画美学からの解釈に還元するのではなく、テレビというメディウム固有の映像表現の実験として捉え直すことに焦点をあて、その分析手法として、申請者がこれまで行ってきたベケットのテレビ研究の方法論と成果を援用した。今年度は、1990年代のアメリカ特有の放送環境下で制作された『Twin Peaks』に対象を絞り、資料調査および先行研究の整理、分析を行った。90年代に人気を博した本作は、その後のアメリカドラマにおける作家主義の台頭を後押しし、1999年~2000年代の ‘Second Golden Age of Television’ の先駆と評価されている。しかし、先行研究では本作をリンチの映画美学の延長として位置づける傾向が強く、テレビ固有の形式やテレビ史上の位置づけに即した実証は不十分であった。これに対し本研究は、ドラマならではの「連続する/終わらない物語」という特性と、作中に反復して登場するメディア技術(無線、ラジオ、テレビ)との結びつきに注目し、主題がテレビ固有の音響・映像の演出によって成り立っていることを明らかにした。これまでの調査から、リンチの実験的なテレビ表現への志向の背景には、ベケットをはじめ、ハロルド・ピンターやキャリル・チャーチルなど、80年代にテレビ劇を手掛けたイギリス演劇を代表する作家らの実験的手法が、同時代および90年代のアメリカ演劇・アメリカのテレビ業界における演出家・脚本家に影響を与えていた可能性が示唆された。現在、その検証のためにインタビュー資料の収集および先行研究の追加調査を進めており、本研究課題をさらに深化させたいと考えている。なお、本研究成果の一部は現在執筆中であり、次年度に論文として投稿予定である。