表題番号:2025C-326
日付:2026/04/03
研究課題欧米における映画論の展開:2000年代以降を中心として
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 文学学術院 文化構想学部 | 講師 | 川崎 佳哉 |
- 研究成果概要
- 本研究は、2000年代以降に欧米で展開されてきた映画論の動向を体系的に整理し、その関心の所在を明らかにすることを目的として進められた。従来、日本における映画研究は国外の理論などを翻訳・紹介することを通じて大きく発展してきたが、同時代の議論については十分に検討されてきたとは言い難い。本研究では、近年の文献を幅広く精査することにより、現代映画論が共有する問題関心や分析手法の特徴を把握することを試みた。重要な成果の一つは、作品分析の方法論に関する理解の深化である。近年、『ヒッチコックをさがせ!:超近接的映画鑑賞のすすめ』(D・A・ミラー著)が邦訳されるなど、映画の細部に注目した精読や緻密な作品分析があらためて注目を集めている。本研究はこうした動向を踏まえつつ、BFIの「Film Classics」シリーズを広く参照した。同シリーズは一冊で一本の作品を扱い、『サンライズ』のような古典から『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』といった重要作、さらに『マトリックス』のような現代映画に至るまで、多様な作品を対象としている。これらを通じて、具体的な作品を精緻に分析する手法が英語圏でどのように展開されてきたのかを考察し、理論的関心と個別作品の分析とを結びつける視座を得た。さらに、とりわけアダプテーション研究に関しては、理論的枠組みに即しながら具体的な作品を分析するという流れで検討を進めた。文学、マンガ、ゲームといった他メディアの実践と比較することで、作品が翻案される際に生じる差異や変容のあり方、さらにはそれらが各メディア固有の表現や語りの構造とどのように関係しているのかを、個別の事例に即して検討した。以上の成果は、現代映画論の動向を把握するにとどまらず、理論と作品分析とを往還する研究の基盤を示すものとなっている。