表題番号:2025C-320 日付:2026/04/03
研究課題保護領統治期モロッコにおけるラジオと越境するナショナリズムの関係史
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 助手 渡邊 文佳
研究成果概要
 本研究の目的は、20世紀の新規メディアたるラジオが、アジア・アフリカ地域のナショナリズムの展開にいかなる役割を果たしたのかを、フランス植民地支配下にあった北アフリカのモロッコを事例に解明することである。
 本研究では次の二つの課題について、基礎的な史料群の整理および分析を進めた。
 まず、1930年代から50年代のモロッコにおけるラジオの発展史と聴取環境の形成過程を通史的に明らかにするため、フランス外交文書、統計資料、モロッコで発行された定期刊行物、広告などを整理した。これらの史料からは、フランス当局の統制のもとで設立された放送局ラジオ・モロッコの運営実態や、ラジオが情報収集や娯楽の手段として大衆化していく過程が示唆される。
 次に、1950年代の国際ラジオ放送の役割を地域横断的に検討するため、当時のアラブ地域において存在感を高めていたエジプト発のラジオ放送がモロッコに及ぼした影響に着目した。モロッコ・ナショナリズム運動とアラブ諸国との連帯、さらには在外運動家とモロッコ国内の民衆との結びつきを、エジプトのラジオ放送がいかに媒介したのかを考察する必要がある。そのため、番組表、演説集、フランス外交文書などを用いて放送内容の分析を進めた。その過程で、個々の放送内容だけでは捉えきれない、アラブ放送空間そのものの構造や特質についても併せて検討する必要性が見出された。
 今後は上記の課題を統合し、モロッコにおけるラジオ史と国境を越えたナショナリズム運動の連動をより精緻に考察することを目指す。