表題番号:2025C-314 日付:2026/02/04
研究課題Comparative Study on the Writing Style of Legal Academic Article's
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 高村 学人
研究成果概要
法学の学術論文のスタイルを分析することで、法的思考とは何か、を新たな視点から明らかにするのが本研究課題の目的である。この目的を達成するため、法学論文の書き方を論じた日本語書籍を網羅的に収集し、横断的な読解を行った。これとの対比で、社会科学の論文の書き方に関して定評のある書籍を日本語と英語のものを収集し、読解を行った。
生成AIを用いて、オープンアクセスの論文の構造を分析することも試験的に行った。法学論文の構造を分析する際に、コンポーネントとなる要素を同定することが大事であるが、この点は、法学論文の書き方マニュアルでも共通理解がないため、今後の課題となる。
あわせて、法学教育においては、論文やレポートだけでなく、試験の答案もあるべき文章表現のスタイルと重視されていることがわかったため、法学入門のテキストも網羅的に収集し、あるべき答案がどのように記されているか、それがなぜ良い答案であると説明されているか、の分析を行った。
法的三段論法があるべき答案の準拠枠組となっていることが確認されたが、法的三段論法それ自体がなぜあるべき法的文章のモデルとなっているのか、の説明が十分なされていないことが発見された。
裁判の判決文がそうなっていることが一つの仮説であるが、判決文の文章のスタイルを法学教育で獲得すべき文章であると法学入門のテキストで論じているものは、なかった。
渡辺雅子(2024)『論理的思考とは何か』岩波書店では、フランスやアメリカでのあるべき文章のモデルは、博士論文から演繹されているとされ、学術が重視されている。法学の場合、学術として先に発展したというよりも、法専門職の養成機関として大学の法学部が形成された歴史を持つ。ゆえに法学における望ましい文章が、博士論文から演繹されるか、実務の文章である判決文から演繹されるか、が不確かになっていると思われる。ここまで思考を進めることができたのが、今年度の特定課題の研究成果である。
来年度以降は、日本のみならず、フランスやアメリカの法学論文の各コンポーネントを同定した上で、計量的に比較できる研究方法を作り出していけるように進めていく。