表題番号:2025C-312 日付:2026/03/17
研究課題渉外的な労働契約における国際私法と労働法の相互関係
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 助手 衛藤 凜哉
研究成果概要
 渉外的な労働契約の法的規律にあたっては、国際私法(準拠法選択規則)に従って準拠法を決定するアプローチと、労働法固有の地域的適用範囲を画定するアプローチとが交錯するが、アプローチ選択の基準や、そもそも両アプローチが排他的であるか否か等、明確でない点も多い。このような問題意識に基づき、本研究課題では、両アプローチの理論的な整理を試みた。現時点での成果は以下の通りである。

 ⑴ 近時のわが国の裁判実務では、上記の両アプローチの双方を採用して判断を示したと解される実例が登場している。この裁判例をもとに、実質法固有の地域的適用範囲の考慮の要否という両アプローチの相違が実際に結論を左右し得ることを明らかにするとともに、私法的側面を有する労働法固有の地域的適用範囲を画定するために用いられてきた基準は、使用者による恣意的操作の容易性という点で国際私法の連結点としては従来批判されてきたものであることを指摘した。以上の研究成果は、判例評釈として、早稲田法学101巻2号に掲載見込みである。

 ⑵ 労働法規固有の地域的適用範囲と国際私法との相互関係の明確化を図り、労働法規の地域的適用範囲の解釈に関する判例・学説の蓄積があるイギリスを対象とした研究を行なった。本年度は、実質法の地域的適用範囲の国際私法上の取扱いに関するイギリス国際私法の基礎理論の解明を中心的に行い、その結果、わが国でも知られる「一方的抵触規則」、「自己制限的実質法規」、「絶対的強行法規」等の概念・呼称に関する統一的理解が醸成されていなかったこと、単一の法規について2つ以上の概念が含有されることがあると理解されてきたこと等が明らかになった。これらを踏まえ、労働法規との関係では具体的にどのように展開されてきたかを解明した成果は、2026年度中に学内紀要にて公表する予定である。