表題番号:2025C-303 日付:2026/02/27
研究課題動産及び債権を目的物とする担保権のプロシーズへの効力に関する日米の比較法研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 青木 則幸
研究成果概要
  本研究は、米国の担保法制の下では、在庫商品のように設定者による事業の通常の処分を予定し追及力の遮断が予定される担保取引において、失われる当初の目的物の価値を補充する制度は、特約がある場合に爾後取得財産への効力を認める制度を有するものの、プロシーズへの追及が特約なく当然に担保権を及ぼすいわば原則的な制度であると見る。このような考え方を基礎に、わが国の現状、とりわけ、近時の立法において採用される制度的特徴のどこに注目すべきかを検討し、今後の発展的研究の基盤とすることを目指すものである。
動産及び債権を目的物とする非占有型担保権は、わが国では、譲渡担保権によって運用されてきた。2025年には、譲渡担保法が成立し、今後は、同法による運用が見込まれる。
 同法は、目的物を、動産、債権、その他の財産に分ける複数担保類型の枠組みを採用している。この枠組みで、動産譲渡担保権をその目的物の処分によって発生する売掛債権のような価値代償物に及ぼす制度は、物上代位(譲渡担保法9条)である。もっとも、物上代位権は、行使の要件として払渡し前の差押えを要求する。設定者が払渡しを受けた金銭に及ばないというだけでなく、行使のために執行裁判所による手続を介在させなければならない。さらに、その差押え前に対抗要件を備える債権譲渡担保が競合する場合には、後者が優先する(同法9条2項)。また、集合動産譲渡担保権の物上代位権には、設定者の補充義務の履行不能という制限もある(同法44条)。
 これには、動産譲渡担保権は、順位の特例による効力の制限(同法36条)があるとはいえ、依然として占有改定による対抗要件を認めている(同法32条)ことから、抵当権に比べて公示が弱いことも理由である。しかし、プロシーズへの追及制度との比較からは、債権譲渡担保の対抗関係の規律への干渉を排除するというポリシーが窺われる。この点に注目すべきである。