表題番号:2025C-270
日付:2026/04/03
研究課題可視光駆動型結合開裂を利用するベンジルクロライドのホモカップリング反応の開発
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 高等研究所 | 准教授 | 太田 英介 |
| (連携研究者) | 理工学術院 | 教授 | 山口潤一郎 |
- 研究成果概要
- 本研究では、可視光レドックス触媒とジルコノセン触媒の協働触媒系を利用した、ベンジルクロライドの還元的ホモカップリング反応の開発に成功した。ビベンジル骨格は多くの天然物や生理活性分子に含まれる重要な構造単位であり、その効率的な構築法の確立は有機合成化学において重要な課題である。従来、ベンジルハライドのホモカップリングには主に、臭化物やヨウ化物が利用されてきた。安価かつ入手容易で安定性に優れる塩化物の利用は、C–Cl結合の高い結合解離エネルギーに起因する反応性の低さから困難であった。本研究では、光励起されたフォトレドックス触媒により生成するZr(III)種が、ベンジルクロライドから塩素原子移動(XAT)を介してベンジルラジカルを発生させる触媒設計を進めた。その結果、ベンジルラジカルの速やかなホモカップリングにより、対応するビベンジル誘導体を温和な条件下で効率的に与えることを見出した。本手法は電子供与性および電子求引性置換基を有する基質や、複素環および医薬品由来の複雑分子にも適用可能であり、幅広い基質適用性を示した。さらに、ヒドロシランが触媒サイクルにおいて重要な役割を果たすことも反応機構解明研究により明らかにした。すなわち、ヒドロシランが生成する塩素ラジカルの捕捉および触媒再生に関与していることが示唆された。本研究は、従来困難であったアルキルクロライドの選択的C–Cl結合開裂を実現し、可視光駆動型σ結合開裂の新たな可能性を提示するものである。以上の成果は、入手容易な原料から有用な炭素骨格を簡便に構築する手法として有機合成戦略の拡張に寄与するとともに、可視光レドックス触媒と遷移金属触媒の協働触媒系による新たな結合活性化手法の設計指針を与えるものである。