表題番号:2025C-260
日付:2026/03/22
研究課題唐詩に詠じられた「胡蝶の夢」について
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 高等学院 | 教諭 | 小田 健太 |
- 研究成果概要
『荘子』斉物論篇に見える、いわゆる「胡蝶の夢」は、中国古典の中でも、最も広く知られた寓話の一つである。
昔者荘周夢為胡蝶。栩栩然胡蝶也。自喩適志与。不知周也。俄然覚、則蘧蘧然周也。不知、周之夢為胡蝶与、胡蝶之夢為周与。周与胡蝶、則必有分矣。此之謂物化(昔者荘周夢に胡蝶と為る。栩栩然として胡蝶なり。自ら喩びて志に適うかな。周なるを知らざるなり。俄然として覚むれば、則ち蘧蘧然として周なり。知らず、周の夢に胡蝶と為るか、胡蝶の夢に周となるかを。周と胡蝶とは、則ち必ず分有らん。此れを之れ物化と謂う)。
この一段では、夢と覚醒、荘周と胡蝶の区別があいまいになり、主体の同一性が揺らぐ。そのような語りによって、「物化」の思想が寓話的に示されることとなるのである。
「胡蝶の夢」は、後世の文学作品においても繰り返し言及されてきた。そうした多様な文学作品のうち、本研究では唐詩に着目した。唐代の詩人たちは、「胡蝶の夢」という思想的寓話を、それぞれの詩にいかにして取り込んでいったのか。本研究は、この点について体系的に明らかにするものである。
行論の手段として、唐詩における「胡蝶の夢」の詩的機能を、
・空間的隔絶の象徴
・時間的変質の象徴
・風景や感情の夢幻化装置
という三点に整理し、それぞれに当てはまる唐詩の諸例について、検討を加えていった。