| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 高等学院 | 教諭 | 森下 壽典 |
- 研究成果概要
本研究課題は、これまで実施してきた歴史学・考古学研究を、歴史教育・授業開発へと具体的に結びつける準備の一環と位置づけられる。とくに、高等学院で実施されている学校設定科目「近現代史通論」において、考古学的知見を含む前近代の歴史事象をいかに活用し、現代的課題と接続させるかが今年度の主眼であった。
研究課題を遂行するため、2025年度の「近現代史通論」では、現代社会が直面する「ウクライナとロシア情勢」、「パレスティナとイスラエルをめぐる諸問題」を重点的に扱った。
これらの紛争においては、民族、国民、国家といった歴史的に構築された概念を、あたかも不変の本質であるかのように提示する際、前近代の事象が政治的に動員・利用されてきた側面がある。授業ではこうした実態を提示することで、生徒が自明視(本質主義的に理解)している諸概念を再考、すなわち脱構築させることを試みた。
実践の一例として、たとえば、1654年のペレヤースラウ会議(条約・協定)をめぐる歴史認識の齟齬をとりあげた。ロシア側は、これをロシア(・ツァーリ国)によるウクライナ・コサックの「併合」と解釈する一方、ウクライナ側では、あくまでもポーランドに対抗するための一時的な(かつ対等な)軍事同盟と位置づける。授業では、このような個別の前近代事象を、史資料を含めて提示し、それをめぐる相反する語りの複数性について生徒に考察させた。その上で、同会議の300周年(1954年)を機に、フルシチョフがクリミアをロシアからウクライナへ割譲・編入した事例を扱い、前近代の事象が、近代以降の政治的文脈においていかに象徴的に利用され、現代の国の枠組みや国境、さらには帰属意識に影響を与えているかを生徒に示した。こうしたアプローチが、本質主義的な概念の脱構築に向けて、有効な教育実践となることを確認していった。
今年度の実践をふまえ、授業については継続的な検証と改良を重ね、その成果は教科教育に関する学会や研究会での発表を目指す。