表題番号:2025C-245 日付:2026/04/02
研究課題近現代史を扱う歴史授業の構成における前近代事象の意義と活用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 森下 壽典
研究成果概要

本研究課題は、これまで実施してきた歴史学・考古学研究を、歴史教育・授業開発へと具体的に結びつける準備の一環と位置づけられる。とくに、高等学院で実施されている学校設定科目「近現代史通論」において、考古学的知見を含む前近代の歴史事象をいかに活用し、現代的課題と接続させるかが今年度の主眼であった。

研究課題を遂行するため、2025年度の「近現代史通論」では、現代社会が直面する「ウクライナとロシア情勢」、「パレスティナとイスラエルをめぐる諸問題」を重点的に扱った。

 これらの紛争においては、民族、国民、国家といった歴史的に構築された概念を、あたかも不変の本質であるかのように提示する際、前近代の事象が政治的に動員・利用されてきた側面がある。授業ではこうした実態を提示することで、生徒が自明視(本質主義的に理解)している諸概念を再考、すなわち脱構築させることを試みた。

実践の一例として、たとえば、1654年のペレヤースラウ会議(条約・協定)をめぐる歴史認識の齟齬をとりあげた。ロシア側は、これをロシア(・ツァーリ国)によるウクライナ・コサックの「併合」と解釈する一方、ウクライナ側では、あくまでもポーランドに対抗するための一時的な(かつ対等な)軍事同盟と位置づける。授業では、このような個別の前近代事象を、史資料を含めて提示し、それをめぐる相反する語りの複数性について生徒に考察させた。その上で、同会議の300周年(1954年)を機に、フルシチョフがクリミアをロシアからウクライナへ割譲・編入した事例を扱い、前近代の事象が、近代以降の政治的文脈においていかに象徴的に利用され、現代の国の枠組みや国境、さらには帰属意識に影響を与えているかを生徒に示した。こうしたアプローチが、本質主義的な概念の脱構築に向けて、有効な教育実践となることを確認していった。

今年度の実践をふまえ、授業については継続的な検証と改良を重ね、その成果は教科教育に関する学会や研究会での発表を目指す。