表題番号:2025C-213 日付:2026/02/03
研究課題全身の協調性分析による協調運動障害評価と要因検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 教授 広瀬 統一
研究成果概要

本研究は、発達障害児に多く認められる協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD 様特性)を、全身の協調性という観点から定量的に評価し、その背景要因を検討することを目的とした。特に、全身運動における協調性の未熟さを「原始反射の残存」と「巧緻運動機能」の両側面から捉え、協調運動障害の構造的理解を試みた点に本研究の特徴がある。

対象は6〜12歳のASD児およびADHD児計27名とし、リズム・バランス・全身協調運動を中心とした12週間の運動介入を実施した。全身協調性の指標として、非対称性緊張性頸反射(ATNR)を含む複数の原始反射評価、および指―母指対立運動テスト(FOT)を用いた巧緻運動評価を縦断的に実施した。その結果、両群においてATNRの残存が高頻度に認められ、とくにASD児では左右両側に及ぶ広範な反射残存パターンが確認された。一方、ADHD児では右側優位のATNR残存が多く、協調運動障害の様相が診断群によって異なる可能性が示唆された。

12週間の介入後、ASD児では立位ATNRの有意な低下および巧緻運動機能の改善が認められ、ADHD児でも巧緻運動機能の有意な改善が確認された。これらの結果は、全身の協調的運動経験が、反射抑制と末梢運動制御の両側面に作用しうることを示している。さらにADHD児では行動調整指標(Conners 3)が有意に改善し、全身協調性の向上が行為制御や自己調整機能と関連する可能性が示唆された。

以上より、協調運動障害は単なる局所的な運動不器用さではなく、全身協調性の未熟さ、反射統合の遅れ、左右協調の偏りといった複合的要因によって形成されることが明らかとなった。本研究は、全身協調性分析に基づく協調運動障害評価の有効性を示すとともに、診断特性に応じた要因理解と支援方略の基盤を提供するものである。