| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 人間科学学術院 人間科学部 | 教授 | 金 群 |
- 研究成果概要
東洋医学では、健康な状態が崩れつつあり、病気となる一歩手前の状態、つまり健康と病気の間の状態を「未病」という。本研究では、日常生活方式や行動などヘルス関連データにおける因果関係を推論し発見する探索的因果分析を用いて、潜在的な健康リスク要因を検知し特定するヘルスデータ統合分析に関する新たな手法を探究し、未病の考えに基づくヘルス因果分析モデルの構築を試みる。具体的には、ウェアラブルデバイスによるヘルス関連データを収集し、利用可能なオープンデータも活用しながら、提案手法の有用性と有効性を実験的に検証する。本研究は、主観的な経験知とデータ分析によるエビデンスに基づく客観的な結果・知見を融合させた総合知を活用したプロアクティブヘルスを目指すものである。
今年度の主な研究成果は以下の通りである。
(1) 本研究では、多変量健康データから潜在的な因果関係を探索し分析するとともに、信頼性と解釈可能性を高めるため、「発見・検証」という2段階フレームワークを新たに提案する[1]。第1段階では、条件付き転送エントロピー(CTE)を用いて交絡変数の影響を軽減しつつ、潜在的な因果関係とその対応する時間的ラグを発見する。第2段階では、因果効果量の定量化や頑健性の確認を含む、第1段階で発見された各関係を検証する。16の健康指標からなるデータセットを用いた実験の結果、発見段階で7組の時間遅延を伴う因果関係が特定され、検証段階でこれら7つの関係の妥当性が確認された。
(2) 生活習慣、健康意識、健康状態の間の因果関係を探索するため、ウェアラブルデバイスや自己評価フォームからヘルス関連データを収集し、潜在的な因果関係を分析・発見するとともに、性別、BMI、健康意識レベルなどのサブグループ間における因果構造を明らかにした。検証実験の結果では、より健康的な行動を促す多面的なヘルスケアアプローチの必要性が示唆された[2]。解明された因果関係と因果グラフをもとにヘルスケアナレッジグラフを構築し、AIエージェントによる個人化プロアクティブヘルスに向けた基礎的な知見と説明可能なエビデンスを提供することが期待できる。
(3) リスク早期警告のためのTD-RAG(タイムアウェア動的ウィンドウ検索拡張生成)を新たに提案し[3]、公開医療データへの適用を試み、有効性が示唆された[4]。マルチスケール動的ウィンドウ、マルチモーダルデータ融合、介入の根拠を示す反事実シナリオ生成についても検討を進めている。さらに、ヘルスケアにおける大規模言語モデル利活用のための指針・効率性・見通しという3つの柱からなるアーキテクチャ[5]や、オントロジー強化型サブグラフ推論とプロンプト学習の統合による帰納的ナレッジグラフ補完[6]を用いたヘルス因果分析モデルの強化と応用の可能性を検討している。
(4) 伝統医学の理念とAIなど新興技術の融合を活かしながら、実社会における健康課題に取り組み、人々のウェルビーイングを追求する新たなチャンスと今後の方向性を示している[8, 9]。