表題番号:2025C-202 日付:2026/02/02
研究課題WDR6制御による肥満抑制効果を用いたmiRNA治療法の探索
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 助教 ワン ジンユン
研究成果概要

本年度は、Wdr6遺伝子の機能解明を目的として、脂肪細胞モデルを用いた基礎的解析を実施した。まず、マウス由来前駆脂肪細胞である3T3-L1細胞を用い、CRISPR/Cas9システムによりWdr6欠損(Wdr6 KO)細胞株を新規に樹立した。樹立した細胞系については、RNAレベル発現解析を通じてWdr6の欠失を確認し、実験に使用可能な安定ノックアウト細胞株であることを検証した。

Wdr6欠損に伴う分子基盤の変化を包括的に解析するため、網羅的なプロテオーム解析を実施した。その結果、エネルギー代謝、ミトコンドリア機能、脂質代謝関連経路に関与する複数のタンパク質に発現変動が認められた。これらの結果は、乳酸およびATP解析の結果と整合的であり、Wdr6が脂肪細胞におけるエネルギー代謝制御ネットワークの一部として機能する可能性を支持するものである。 

次に、Wdr6欠損が脂肪細胞分化過程に及ぼす影響を検討した。分化誘導後の形態学的観察および脂質蓄積の評価の結果、Wdr6 KO細胞では野生型細胞と比較して脂肪滴形成が著しく抑制され、Wdr6 KO細胞では野生型細胞と比較して分化の進行が遅延する傾向が認められた。脂肪細胞分化関連遺伝子の発現変化について、qPCR解析およびタンパク質レベルでの検証を行った。その結果、Wdr6 KO細胞では、PPARγC/EBPαFABP4 などの主要な脂肪細胞分化マーカー遺伝子のmRNA発現が有意に低下しており、対応するタンパク質発現についても同様の低下傾向が認められた。これらの結果は、Wdr6欠損が脂肪細胞分化の転写制御ネットワークに影響を及ぼす可能性を示唆するものである。

今後は、これらの細胞実験で得られた知見を基盤として、Wdr6欠損が個体レベルの代謝調節に及ぼす影響を明らかにするため、小鼠モデルを用いた解析を進める予定である。特に、高糖質あるいは高脂肪食負荷条件下における糖代謝変化に着目し、耐糖能やインスリン応答などの指標を用いて、Wdr6の生理的役割を包括的に検証することを計画している。

以上より、本研究はWdr6の脂肪細胞分化およびエネルギー代謝制御への関与を示す基盤的知見を提供する成果である。