表題番号:2025C-195
日付:2025/10/13
研究課題イタリアにおけるバングラデシュ人移民の動態
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 人間科学学術院 人間科学部 | 教授 | 樋口 直人 |
- 研究成果概要
- 本年度は、ボローニャ市周辺とモンファルコーネ市で調査を行ったほか、主に理論的背景に関する検討と報告を行った。というのは、主たる調査地たるモンファルコーネ市において極右政党の市長が誕生し、モスクが閉鎖されるといった事態が生じているからである。モンファルコーネ市は人口3万人のうち外国籍が3割、バングラデシュ移民が2割を占めており、市街でのバングラデシュ人のプレゼンスは大きい。それゆえ、モスクの閉鎖以外にも市庁舎前のベンチを撤去(バングラデシュ人しかベンチを使わないという理屈による)、ブルキニ着用の禁止(これは法的に認められなかった)といった排外主義的な政策をしいている。こうした状況の研究には、移民のフローを説明する理論枠組みでは対応できず、それゆえ私がこれまで出がけてきた排外主義の研究もアップデートする必要が生じた。それに対して、スペインで開催された国際会議にて排外主義的言説の主流化をテーマとした報告を行い、British Association for Japanese Studiesにてネットでの排外主義的言説を発信する者の特性に関する報告を行った。また、欧州の排外主義の研究をレビューし、それを参議院選挙での参政党の台頭に適用した講演を、日本記者クラブで行った。また、イタリアのバングラデシュ移民は1:2の比率で男性が多い。これは、男性が単身でイタリアに渡り、法的地位を得てから家族を呼び寄せることによる。これは単にジェンダー比率の違いを超えて、男性=非正規での入国、女性=家族合流として正規での入国という入国経路の大きな相違をもたらす。しかしそれゆえに、女性の方がイタリア社会との接点が少ない。こうしたジェンダーによる相違に関して、分析枠組みを整備して International Migration Conference in the 21st Centuryで報告した。