表題番号:2025C-191
日付:2026/02/15
研究課題近現代の地域社会と救済レジームの社会学的研究
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 人間科学学術院 人間科学部 | 教授 | 武田 尚子 |
- 研究成果概要
- 本研究では、イギリスのヨーク救貧連合区における近代救済資源について考察した。イギリスでは1834年に「救貧法改正法」が制定され、救貧連合区を単位に新たな救貧制度が発足した。救貧税徴収方法は、従前を踏襲し、各教区単位に不動産を評価・査定し、不動産占有者から徴税した。救貧税はイギリスの地方税の原型である。1835年に「都市自治体法」が施行された。現代の都市自治体が幅広い公共領域の行政事務を所管するのとは異なり、都市自治体の権限領域は限定的で、該当の行政に必要な税源・徴税方法は議会の認可を経て決定された。19世紀の産業化によって都市の社会問題は拡大した。新たな課題・領域ごとに特別行政団体が設置され、徴税方法が認可・決定された。ヨークの場合、「都市自治体法」で認可された「ヨーク・コーポレーション」が中核的自治行政機関である(商工業者・商工業産業基盤を管理)。救貧行政は「ヨーク救貧連合区」救貧委員会が救貧税の徴税・分配を管理した。このほか都市化の進展に即し、衛生行政、教育行政、公道行政などが付加され、領域ごとに特別行政団体が設置されて業務を所管した。付加された行政領域の税源は、救貧税を原型にした「地方税」であった。すなわち、救貧税の徴税方法・組織をそのまま活用し、使途を救貧以外の衛生、教育、公道行政などに拡大した。1894年「地方行政法」制定により、地方自治庁が救貧行政の所管庁になった。同年、ヨーク救貧連合区は課税区域を郊外3区に拡大し増収体制を整えた。しかし、都市中心区と郊外区では地域課題が異なり、業務は複雑化した。「院外救済連合」を設置し、業務の多様化・複雑化に対処した。産業化・都市化で空間的範域は拡大、行政課題は複雑化したが、地方行政は未統合だった。ヨークの「院外救済連合」設置は近代イギリス地方行政の編成途上における諸問題に対する対応の一例を示している。