| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 人間科学学術院 人間科学部 | 教授 | 竹中 宏子 |
- 研究成果概要
本研究では、スペイン・カタルーニャの人間の塔(Castells)について、地域的・歴史的背景の異なるチームの比較を通じ、その普遍性と多様性を考察した。主としてCastellers de VilafrancaおよびCastellers de Santsにおいて、練習や活動への参与観察ならびに関係者への聞き取り調査を実施した。その結果、カタルーニャ域内に100以上存在する人間の塔チームは、共通する文化的基盤を有しながらも、それぞれ独自の組織運営、技術の導入、地域との関係性を発展させていることが確認された。
例えばVilafrancaでは、競技会における高い実績や企業等からの支援を背景として、練習場に電光掲示板を設置するなど、新たな技術や方法を積極的に導入していた。地理的・歴史的には伝統的地域に位置づけられる一方、その実践には、従来の「伝統的地域/非伝統的地域」という二分法のみでは捉えきれない、技術や組織文化の横断的な受容がみられた。
また、域外・海外への遠征のあり方にも差異が認められた。既存の人的ネットワークを介して現地の人々との交流を重視するチームがある一方、世界的に著名な場所で塔を築くことによって、その存在を広く発信しようとする活動もみられた。後者は一見、地域との結びつきや集団的協働を重視するCastellsの性格と異なるようにもみえる。しかし、人間の塔を世界の人々に身近な文化として認識させ、カタルーニャの伝統文化の国際的な広がりを促進する契機として捉えることもできる。
こうした多様性の一方で、音楽の基本的な旋律、塔の形態、人々を組み上げる基本的な身体技法には、チームを超えた明確な共通性が存在することも確認できた。今後は、急速に世界へ広がる人間の塔が、ヨーロッパのみならずチリ、オーストラリア、日本などにおいて、カタルーニャ文化のディアスポラ的実践として存続するのか、それとも各地域で新たな文化的意味を獲得するのかを、継続的に検討する必要がある。