表題番号:2025C-180 日付:2026/04/03
研究課題企業の基礎研究と経済成長
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 及川 浩希
研究成果概要
民間企業による基礎研究への投資が増加している現状を踏まえ、本研究では基礎研究の企業業績への影響、さらにそれがマクロ経済成長を促すメカニズムを分析した。

ミクロレベルでの基礎研究と企業業績の関係は、科学論文と特許文書の関係性をとらえたサイエンス・リンケージ・データを企業財務データと結びつけることによって行った。興味深いことに、基礎研究指標は売上との相関は比較的弱く、規模の小さい企業でも基礎研究を行っていることがわかった。一方で、基礎研究指標は利益率に対しては有意に正の因果効果を持っており、収益性に貢献していることが見出された。

これらの実証結果を踏まえ、基礎研究と応用研究の双方に投資する企業を想定したマクロ経済成長モデルを構築した。このモデルでは、企業は応用研究投資によって生産性を向上させるが、それは基礎研究によって得られた知識がなければ限界を迎えると仮定する。企業の基礎研究投資の判断には企業の生産規模と基礎研究の必要性の二つの要素が影響するため、規模が小さくても基礎研究を行う企業を描くことができる。経済成長は基礎研究と応用研究のバランスによって決まるが、主として基礎研究の外部効果の強さから、最適なバランスが自由市場で達成できるわけではなく、公的な基礎研究投資も重要な役割を果たす。また、場合によっては基礎研究投資が全体的に低下し、ゼロ成長の罠に陥るケースも理論的に見出された。

マクロデータと企業分布のデータで米国経済にカリブレートしたモデルを用いたシミュレーションでは、基礎研究補助金や公的な基礎研究投資の効果を定量的に分析した。