| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 社会科学総合学術院 社会科学部 | 教授 | 北村 能寛 |
- 研究成果概要
本研究では、近年の人工知能の発展の中でも特に注目される大規模言語モデル(Large Language Model: LLM)の金融時系列分析への応用可能性を検討する。既存研究として、筆者らはまず「Prediction of foreign exchange rates by a large language model」(SICE FES 2024)において、為替市場における大規模言語モデルの予測能力を実証的に分析し、テキスト情報に基づく為替変動予測の有効性を確認した。さらに、「Predicting FX market movements using GAN with limit order event data」(Finance Research Letters, 2025)では、生成的敵対ネットワーク(GAN)を用い、リミットオーダーブックの高頻度データから価格変動を予測するモデルを構築した。本研究課題はこれらの成果を統合し、言語モデルの文脈理解能力とディープラーニングによる時系列構造抽出を組み合わせることで、ニュースや注文フローに内在する情報をより高精度に捉え、金融市場の価格形成メカニズムを解明することを目的とした。
本研究では、外国為替市場の高頻度リミットオーダーデータを用いて、生成的敵対ネットワーク(GAN: Generative Adversarial Network)による市場変動予測モデルを構築した。従来のディープラーニング手法では、価格系列の局所的特徴を捉えることに限界があったが、本研究は注文イベント系列を直接入力とし、ディーラーフローや板情報の非線形的依存関係を学習する枠組みを提案した。具体的には、Generatorが市場の将来状態を模倣し、Discriminatorが実際のデータとの識別を通じて特徴抽出を最適化する構造を採用した。その結果、LSTMやCNNなどの従来モデルと比較して、短期的な方向予測(上昇・下落・横ばい)において高い精度と安定性を達成した。さらに、ニュース発表やボラティリティ上昇時の市場反応を再現する能力も確認され、GANが市場マイクロストラクチャの非線形動態を表現する有効な手法であることを示した。