| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 社会科学総合学術院 社会科学部 | 教授 | 鄭 有希 |
- 研究成果概要
本研究では、知識集約型社会およびVUCA環境下におけるキャリアの変容に着目し、「知識ベースのキャリア」と主観的キャリア成功との関係を、キャリア資本の視点から理論的・実証的に検討した。特に、従来の線形的・組織内キャリアから、個人の知識・スキル・関係性を基盤とする動態的なキャリアへの移行が進む中で、個人がどのようにキャリア成功を認識・評価するのかを明らかにすることを主な目的とした。
研究活動としては、まず、知的キャリア(intelligent career)概念および「3つの知識(knowing-why, knowing-how, knowing-whom)」に関する先行研究を整理し、これらをキャリア資本の枠組みの中で再定義する理論的検討を行った。その上で、韓国の就業者データを用いた実証分析を通じて、キャリア資本の各次元が主観的キャリア成功にどのように関連するのかを検証した。
分析の結果、知識ベースのキャリアにおいては、仕事に対する意味づけや動機づけ(knowing-why)、専門知識やスキルの蓄積(knowing-how)、および人的ネットワークや社会関係資本(knowing-whom)から構成されるキャリア資本が、主観的キャリア成功を高める上で重要な役割を果たしていることが明らかとなった。特に、客観的なキャリア成果(昇進や報酬)よりも、仕事への満足感、自己成長の実感、キャリアに対する納得感といった主観的評価が、知識ベースのキャリアにおいて中心的な成果指標となっていることが示された。
一方で、本研究は、キャリア資本の効果が文化的・制度的文脈によって左右される可能性を示唆している。韓国の文脈においては、競争的な労働市場環境や高い成果志向が存在する一方で、個人が主体的にキャリアを構築する知識ベースのキャリア志向が、主観的キャリア成功の形成において重要な意味を持つことが確認された。すなわち、組織から与えられるキャリアではなく、個人が獲得・活用するキャリア資本の質と組み合わせが、キャリア成功の認識を大きく左右していることが明らかとなった。
本研究は、これまで主として欧米を中心に議論されてきた知的キャリアおよびキャリア資本理論を、東アジアの一国である韓国の文脈において実証的に検討した点に理論的貢献がある。また、「知識ベースのキャリア」という概念を、主観的キャリア成功との関係から精緻化した点で、キャリア研究および組織行動論に新たな知見を提供するものである。さらに、本研究の成果は、知識労働者のキャリア支援や人材開発施策を検討する上で、文化的文脈を踏まえたキャリア資本の重要性を示す実践的示唆を与えるものである。