表題番号:2025C-157
日付:2026/04/02
研究課題有機半導体PEDOTにおけるEpsilon-Near-Zero波長の自在制御
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 理工学術院 国際理工学センター(理工学術院) | 教授 | 賈 軍軍 |
- 研究成果概要
金や銀などの貴金属や縮退半導体では、プラズモン共鳴波長近傍において誘電率の実部がゼロに近づく Epsilon-Near-Zero(ENZ)状態 が現れ、高次非線形応答の増強など特異な光学特性を示す。この特性は光スイッチングデバイスをはじめとする次世代光通信技術の基盤として注目されている。一方で、ENZ波長はキャリア密度に強く依存し材料固有の値としてほぼ固定されるため、外部からの自在制御が困難であり、光通信デバイス応用における本質的な制約となっている。
本研究では、有機半導体 PEDOT:PSS 薄膜 に着目し、ポーラロン(polaron)励起を利用した ENZ波長の動的・可逆制御 を実現した。光励起により誘起されるポーラロンの形成・解離に伴うホール濃度変調を通じて、ENZ波長のダイナミックチューニングが可能であることを示した。パルス光による瞬時励起により、赤外通信波長帯において最大 150 nm のENZシフト を観測した。さらに超高速分光により、ポーラロン形成は約 80 fs、解離は約 280 fs の時間定数で進行することを明らかにし、サブピコ秒スケールでの可逆的ENZスイッチングの実現可能性を示した。
本成果は、有機p型半導体においてポーラロン励起を介したENZ波長の動的制御を実証したものであり、従来困難であった ENZ特性のオンデマンド制御 を可能にする新たなプラットフォームを提示する。これにより、柔軟オプトエレクトロニクスにおける マルチバンド光スイッチングデバイス の実現に向けた設計指針を提供し、特に赤外領域における次世代光デバイス創出への展開が期待される。