表題番号:2025C-152 日付:2026/03/27
研究課題肝臓のニューレグリン1遺伝子発現制御機構の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 合田 亘人
研究成果概要

肥満を基盤として発症する2型糖尿病に対し、肝臓はさまざまな分泌因子を放出することで重要な役割を果たしている。これまでに我々は、肝臓から切断・分泌されるニューレグリン1が膵ラ氏島に働きかけ膵beta細胞の代償性増殖を誘導することで血糖値の上昇を抑制することを報告した(Nat.Commun., 2025)。本研究では、2型糖尿病発症過程で発現誘導されるニューレグリン1の制御メカニズムについて解析を行った。公開されているChIP-Atlasを用いて、ニューレグリン1遺伝子開始点周辺とその上流に結合しうる転写因子を探索した。その結果、CTCFTEADHNF4aCEBPなどの転写因子が結合することが分かった。一方、初代培養マウス肝細胞において、培養日数に依存して肝細胞の脱分化を伴ったニューレグリン1発現上昇が認められる結果に基づいて、同様に公開データベースを解析したところ、Hippo経路がニューレグリン1遺伝子発現にかかわる可能性が示された。まず、初代培養肝細胞の細胞密度を変化させ、ニューレグリン1遺伝子発現変化を解析した結果、細胞密度と負の相関があることが明らかになった。また、この応答はHippo経路にかかわるYes-associated proteinYAP)とTranscriptional Enhanced Associate DomainTEAD)の結合を阻害するVerteporfinを投与すると、低密度培養により誘導されたニューレグリン1遺伝子発現が高密度培養と同じ程度まで抑制されることが明らかになった。一方、マウス肝臓において、ニューレグリン1遺伝子発現を発現増強できる高糖質高脂肪食を投与した肝臓を用いて解析した結果、Yes-associated proteinYAP)タンパク質の核内集積が増強することを見いだした。脂肪性肝疾患ではHippo経路が抑制されYAPが活性化されるとの報告を考慮すれば、これらの解析結果は2型糖尿病発症過程の肝臓で発現誘導されるニューレグリン1遺伝子の発現制御にYAPが重要な役割を果たしている可能性が高いと言える。