表題番号:2025C-150 日付:2026/04/03
研究課題疎水性活物質を利用する水系レドックスフロー電池の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 講師 岡澤 厚
研究成果概要

再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、電力系統を安定化するための大規模定置型蓄電システムの重要性が高まっている。その有力候補であるレドックスフロー電池は、高い安全性と拡張性を有する一方、実用化されているバナジウム系では、腐食性の高い硫酸溶液の利用や資源制約の大きいバナジウムへの依存が課題となっている。そこで本研究では、資源制約の少ない有機分子を活物質とし、高濃度LiTFSI水溶液を用いて高濃度に溶かすことで高エネルギー密度化した次世代レドックスフロー電池の実現を目指して研究を行った。

正極活物質としてアセチルフェロセンおよびジアセチルフェロセンに着目し、それぞれ4 MLiTFSI水溶液に対する高い溶解度(アセチルフェロセン:4.2 M、ジアセチルフェロセン:2.8 M)を示すことを見出した。ジアセチルフェロセンは酸化還元電位が0.85 V (vs. SHE)と高く、水系正極液として申し分ない値であった。さらに、アセチルフェロセンについてはビオローゲン系負極液との組み合わせでフローセル試験(活物質濃度0.1 M)を実施し、クーロン効率99.95%、容量減少率0.51%/日という高い可逆性と安定な充放電サイクル特性が確認された。溶解度から見積もられる理論体積エネルギー密度は31 Wh/Lであり、既存のバナジウム系レドックスフロー電池にも匹敵する値を示した。加えて、負極液候補の探索も進め、いくつかの化合物について安定な酸化還元挙動を確認している。溶解機構の解明については共同研究を実施し、MD計算からアセチルフェロセンの高溶解度は、シクロペンタジエニル環と水分子との水素結合様の静電相互作用に由来するエンタルピー利得である可能性が示唆された。以上より、本研究は資源制約の少ない有機活物質を用いた高性能水系レドックスフロー電池の実現に向けて重要な知見を与えるものである。