表題番号:2025C-105 日付:2025/10/13
研究課題セキュアなビッグデータ解析に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 山名 早人
研究成果概要

Society 5.0時代においては、あらゆるモノがつながり、多種多様なデータが社会基盤を構成している。その利活用を促進するためには、個人情報やプライバシー保護の課題を解決することが不可欠である。これに対する有力な技術の一つとして、準同型暗号(HE: Homomorphic Encryption)を用い、暗号化状態のまま全ての演算を行う手法が挙げられる。しかしながら、この方式は実行時間及び計算可能な演算の観点から依然として実用化には課題が残る。

本研究では、準同型暗号上で直接計算できない不連続関数の効率的な実現を目的とした。具体的には、これまで本研究室で提案してきた「整数を対象とするBFV/BGV方式におけるルックアップテーブル(LUT)を用いた不連続関数実現手法」を、実数演算を扱うCKKS方式に拡張し、非対話的に動作する新手法を提案した。

CKKS方式を採用することで、LUT構築の柔軟性と計算効率を向上させた。本提案手法の評価実験では、精度とレイテンシの間で柔軟なトレードオフ関係を実現できることを確認した。具体的には、LUTサイズを大きくすることで関数出力の精度が向上し、ユーザは用途に応じて計算精度と処理速度の最適なバランスを選択できる。
実験結果として、より広い平文空間を持つ従来方式と比較し、レイテンシを最大19%削減平均絶対百分率誤差(MAPE)を最大81.1%低減することを達成した。