表題番号:2025C-085
日付:2026/03/08
研究課題介護保険料の将来推計に基づく公的介護保険制度の持続可能性に関する考察
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 商学学術院 大学院会計研究科 | 教授 | 大塚 忠義 |
| (連携研究者) | 商学学術院 | 非常勤講師 | 谷口豊 |
- 研究成果概要
- 日本では公的介護保険制度が導入されてから20年ほど経過している。2000年の介護保険制度開始時点は介護保険料の全国平均(各市区町村の人口による加重平均)は2,911円だったが、2023年時点の全国平均は6,014円と2.07倍の増加となっている。現状では高齢化の進展より介護保険料の増加の方が著しく、かつ今後も介護保険料は増加していくことが見込まれる。介護保険制度の運営財源の半分を占める介護保険料の将来推計は、社会保障財源や国民負担などに関する政策を検討する上で必要となる。そのため、将来推計にあたってはその精度が重要である。介護保険料の将来推計にあたり、基礎となるのは要介護認定率の将来推計である。前研究の「健康寿命および要介護者数の将来推計」(大塚・谷口)では、介護給付等実態調査(厚生労働省)の2009年~2015年の7年間分の実績を用いた要介護認定率の将来推計を行った。その後、データが蓄積され実態も変化している。本研究では、まずデータを最新状況まで反映し、前研究の要介護認定率の将来推計を更新する。次に、算定された要介護認定率の将来推計をもとに市区町村別の介護保険料の将来推計を実施する。そして、推計した市区町村別の介護保険料をもとに、今後の各市区町村の介護保険料の変化と市区町村の格差の状況に関して分析を行う。分析の結果、次のような知見を得ることができた。介護保険料の市区町村の最大値/最小値は2000年に267%であったが、2020年に290%であり、2040年に386%となる見込みで、介護保険料の負担が大きい地域と小さい地域との格差は今後も拡大傾向にあることが見込まれる。また、2040年の介護保険料の上位20のうち10市区町村が大阪府に集中している。加えて、介護保険料の増加率が大きい市区町村は埼玉県、千葉県、茨城県など東京のベッドタウンの市区町村に集中することが見込まれる。介護保険料の市区町村格差の拡大の要因としては施設定員率や通所サービスと施設サービスの偏在などが挙げられる。しかしながら、90歳以上の高齢者の増加、65~74歳の前期高齢者の減少といった市区町村の人口構造の変化による格差拡大は重大である。これらの現象は一定の地域に偏在しているとはいえ、解決のための方策の立案は困難であるといえる。適切な介護サービスを継続的に供給するための体制整備は早急な行政課題であると思料する。