表題番号:2025C-079 日付:2025/10/22
研究課題住民組織の成立過程の日仏比較に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 准教授 國府 久郎
研究成果概要
 住民組織の成立過程の歴史に関しては、日本の社会学の分野で研究が蓄積されてきた。その成果を比較検討することによってフランスの住民組織の形成過程の特徴を浮き彫りにするのが本課題の目的である。とりわけ玉野和志氏の諸研究、『町内会-コミュニティからみる日本近代』(2024年刊)、『近代日本の都市化と町内会の成立』(1993年)を考察する。日本では近代化の過程において労働運動が早期に弾圧され、労働組合が欧米ほど発達しなかった。一方、民衆は町内会を通じて集団的に意見を表明し、政治的に影響力を持つに至った。欧米諸国においても、中田実『世界の住民組織―アジアと欧米の国際比較―』(2000年刊)や法社会学者の高村学人『アソシアシオンへの自由―<共和国>の論理―』(2007年刊)等で明らかにされたように、住民組織は存在していたが、日本におけるほど全住民を対象とするような広範囲な組織ではなかった。これまでマルセイユ、リヨン、トゥールーズにおいて実施してきた調査のように、今後は人口が最も多かったパリ地域圏を実地で調査し、住民組織の成立の程度を史料から調べていく必要がある。