表題番号:2025C-078 日付:2026/04/03
研究課題〈人造人間〉の比較文学・比較メディア研究──映画『アイム・ユア・マン』を中心に
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 講師 柳橋 大輔
研究成果概要
今年度はまず、映画『アイム・ユア・マン──恋人はアンドロイド』Ich bin dein Mensch (ドイツ 2021年、マリーア・シュラーダー監督)に登場する〈人造人間〉モティーフの特性を理解するため、その原作であるエマ・ブラスラフスキーの短篇小説Ich bin dein Mensch. Ein Liebeslied (「アイム・ユア・マン──ある愛の歌」、2019年)と比較する作業に取り組んだ。当該モティーフ史においては男性である人間と女性型〈人造人間〉との関係が描かれることが一般的である一方で、両作の特徴はこの伝統的ジェンダー役割を逆転させている点にある。しかし、近代以降における〈人造人間〉ものの支配的ナラティヴに忠実な傾向をもつ原作小説に対し、かかる定石を創造的に改変する映画版には生成AI実用化前後の社会に共振する今日的な表現を看て取ることができる。コラム「鹿とアンドロイドのいる風景──『アイム・ユア・マン』について」に要約的にまとめた以上のような観察により、以後の研究のための仮設的前提が得られた。これに基づき、映画版にみられる諸々の特徴とシュラーダー監督のこれまでのフィルモグラフィとの連関を確認したのち、類似の主題を有する欧米や(日本を含む)アジアの映画・小説等の調査を行ない、同時代におけるモティーフの間テクスト的・間メディア的展開をめぐる分析に継続的に取り組んでいる。さらに、モティーフの歴史的遠近法をより具体的に確認すべく、ドイツでの資料調査を踏まえ、類比的な主題をもつ過去(とくに世紀転換期から両大戦間期)の文学・映画を比較対象としてとりあげ、その意味論的な差異を文化的・社会的文脈を重視しつつ読解する作業にも着手している。今後はこれらの取り組みと並行して、本作をブラスラフスキーによる他の関連作品とも比較し、先行研究を参考にさらに分析を深めていく予定である。