表題番号:2025C-073 日付:2026/03/26
研究課題Cross-border M&A waves in Japan
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 助手 飯野 佳亮
研究成果概要
 本研究の目的は、日本企業によるクロスボーダーM&Aをブームという観点から分析し、その発生要因と経済的帰結を解明することである。従来、M&Aブームの解明はコーポレートファイナンスの重要な課題の1つとされ、米国を中心に研究が蓄積されてきた。しかし、多くの先行研究は国内M&Aを対象としており、クロスボーダーM&Aを分析した研究は海外でも少ない。国内市場の縮小が続く中で、クロスボーダーM&Aの重要性が増している日本を分析対象にする意義は大きい。
 本年度は、これまで実施した分析の精緻化を図った。まず、クロスボーダーM&Aブームの発生要因を解明するための分析では、ターゲット国の特性を考慮できていなかった。クロスボーダーM&Aは国を跨ぐ投資であるため、ターゲット国の特性が影響を与える可能性がある。そこで、先行研究に倣って産業×年×地域のパネルデータを再構築し、ターゲット国の特性を考慮した上で再度推計を行った。分析の結果、暫定的ではあるが、産業ショックなどの要因に加えて、ターゲット国との貿易量が多い場合や、M&A集中度が高いとクロスボーダーM&A件数が高いことが明らかにされた。さらに、産業の競争度が高い場合にもクロスボーダーM&Aの実施件数が高いことが明らかにされた。
 次に、クロスボーダーM&Aブームのパフォーマンス分析では、ブーム期中のタイミングと経験に焦点を当てた分析を行った。国内M&Aブームを分析した先行研究ではブーム期中のタイミングが重要であると指摘され、また、日本ではクロスボーダーM&Aを繰り返す企業と、初めて実施する企業で二極化している。この点に注目して分析すると、ブーム期の後半に初めてクロスボーダーM&Aを実施した企業では、M&A後の業績が低いことが明らかにされた。この結果はブームに乗じて非合理的なM&Aが実施されている可能性を示唆する。