表題番号:2025C-061 日付:2026/03/08
研究課題中近世ヨーロッパ町家に見るフランボワイヤン・ゴシック式建築の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 堀越 宏一
研究成果概要

1516世紀のフランボワイヤン・ゴシック式建築の特徴としては、聖堂建築の場合、側廊側面などの窓に見られるトレーサリーの火炎状の形状が指摘されることが多いが、町家建築の場合、むしろ建物の窓や戸口の上辺を飾る「宝珠状曲線装飾/オージー・アーチ」(アーチの中央が宝珠ないし玉ネギの先端のように上方に尖った形状)によって、それらがその時代に建てられたものであることを知ることができる。

 その影響は、その後のゴシック式聖堂建築とは異なった分野に及ぶこととなった。この点に関しては、昨年度から継続して考察してきた。

すなわち、第一に、宝珠状曲線装飾が契機となって、フランボワイヤン・ゴシック式建築のもう一つの特徴である偏円アーチが生み出されたと推定される。ゴシック式の尖頭アーチに比べて、アーチ全体の高さを低く抑えることのできる偏円アーチは、その後の石造アーチの主流となったという点で建築史的に重要である。宝珠状曲線装飾は、これまで議論されることの少なかった偏円アーチの起源について考察する手掛かりを与えてくれる。

第二に、1516世紀のハーフティンバー式木造町家(土台は石造で、1階以上は木骨真壁工法)の木造窓枠上辺にも、宝珠状曲線装飾が用いられていることから、この宝珠状曲線装飾を手掛かりに、石造と木造双方に、フランボワイヤン式という共通性が見られることを明らかにすることができる。

 2025年度には、ブルターニュ地方とノルマンディー地方の木造町家を対象としてこれら2点の視点を深化させることを考え、さしあたり同様の結論を得ることができた。しかし、偏円アーチの起源という建築史上の難問については、オージー・アーチによる比較的低い高さの開口部を実現しているという推定以上の結論を得ることはできなかった。