表題番号:2025C-058 日付:2026/03/12
研究課題古代語の文類型と文の意味
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 仁科 明
研究成果概要

日本語の文の種類については、さまざまな観点から区分が行われてきているが、文の中核となる品詞と構成原理に注目した議論としては、山田孝雄『日本文法論』(1904、宝文館)、『日本文法学概論』(1936、宝文館)などでの述体/喚体の区別は現在でも注目に値するものである。本研究では、上代語に注目し、それを拡張しながら日本語の文の種類の基本を検討した。

日本語の文については、述語用言によってまとまるとされることが多い。現在の用語で言えば、述語用言の格体制に支えられているタイプの文が基本だということであろう。しかし、山田文法(上掲書など)で言われるように、名詞を中核要素としてまとまる喚体の文は、それとは異なる成り立ちにみえる。また、古代では二項の名詞(相当要素)の並列と係助詞(終助詞)の介在によってまとまると見られる文(「名詞の係り結び」とでも呼ぶべきもの)も多く観察される。後者は、名詞が「なり」をともなって述語になる文(このタイプの文も上代から例がみられる)とは成り立ちが異なるものと考えられる。本研究では、少なくともこの三つを古代の日本語の基本文型として考える必要があることを論じた。もちろん古代語の文も単純ではない。狭い意味での係り結び文(用言述語の係り結び文)の位置づけの明確化などは、今後かんがえていく必要があるが、ひとまずは、この三つの原理を基本とし、その混淆として理解できるものと見通している。

このような観点は、古代語の述語形式を検討してきた研究代表者の研究を裏面から支えるものともなっている。そのため、これらの議論の成果の一部は、簡単なかたちではあるが、今年度刊行した著作(研究成果発表実績欄を参照)の第一部(総論)の冒頭部分にもまとめられている。