表題番号:2025C-054 日付:2026/02/02
研究課題教育段階および成人期の就労段階における境界知能者の課題と支援
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 梅永 雄二
(連携研究者) 山口県立大学 専任講師 高橋幾
(連携研究者) 明星大学 准教授 繩岡好晴
(連携研究者) 相模女子大学 専任講師 宮野雄太
研究成果概要

 成人期に就労が困難であり、就職しても長続きせずに離職につながってしまう人たちの中にSLDADHDASDといった発達障害の人たちが少なからず存在している(梅永、2017)

また、診断はされていないものの、医療や教育、就労などにおいて、何の支援もないために様々なトラブルに遭遇している人たちの中に「境界知能」という人たちが存在している(Pelutopuro,2022)

彼らは学校教育の段階では、授業についていけないためにいじめに合い、不登校となる者も多く、中には非行に走る者もいることが報告されている(宮口、2019)。

「境界知能」はIQ70から85までの知能レベルを指しているが、今日の公式の診断体系では知的障害(知的発達症)には含まれない。最新のDSM-5-TRでは、臨床的に対応が必要な状態として巻末にまとめられたなかで、「境界線の知的機能Borderline Intellectual Functioning」が記載され、診断の際の注意喚起がなされているのみである。実際、境界知能の原因となりうる医学的な理解はおろか、成長過程や健康リスクはほとんどわかっておらず、福祉や教育の制度の枠組みの中での位置づけはあいまいで、「忘れられた人々」と呼ばれる所以である。

境界知能者は、通常学級、特別支援学級、あるいは公教育からはずれた環境の中で成長してきている。彼らを取り巻く環境が実にさまざまであるのと同様に、併存する発達障害を含む精神障害(不安、うつなど)は多様である。その割合は一般集団や軽度知的障害と比べても高いという報告もある。軽度知的障害との共通点だけでなく、相違点についても明らかにしなくてはならない。また境界知能の人たちの中でも、共通点よりも相違点の方が大きい可能性もある。

本研究においては、境界知能者が日本には約1,700万人存在しているにもかかわらず、学校や就労現場で認識されずにいるため、社会に適応しにくいことがあきらかになった。