表題番号:2025C-051
日付:2026/04/03
研究課題現代朝鮮語における与格助詞-hantheyの示す場所性について―移動動詞結合と存在詞結合を中心に―
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 文学学術院 文学部 | 准教授 | 山崎 玲美奈 |
- 研究成果概要
- 現代朝鮮語の与格形式である-eykey及び-hantheyは,概ね日本語の「に」格に相当する。この両形式には,移動動詞や存在詞と結びつき「(誰々)のところに」という場所性を表す場合がある。-hantheyについては語源自体が知られておらず,現代朝鮮語において2つの与格形式が共存するに到った過程等も明らかではない。本研究ではこの両形式のうち-hantheyの場所性という意味機能に注目し,近代までの歴史資料を用いてその語源や意味用法の変化等という歴史的変遷を中心として分析を行った。収集した用例から年代が不確定なものを除外すると,-h@nteyは1887年,-anteyは1880年,-hantheyは1901年に初めて文献でその形式を確認することができた。そして先行研究では語源や由来の明確な根拠は不十分だった点に対し,-hantheyという形態が「hata(相当する,値する)」の連体形に「ところ」を意味する語が付加することで成立した可能性を示した。すなわち-hantheyの要素である-theyは本来「tey(ところ)」に由来し,遠隔順行同化を経て現在の形態に至ったと考えることができる。さらに与格の意味を持つ方言形の- issnunteyおよび- inteyが「issnun te」に起源すると考えられる点は,「hata(相当する,値する)」の連体形に「ところ」が付属した形に由来するという見方と一致し,提示した仮説を補強する傍証となる可能性を示している。以上を踏まえ,-hantheyの成立を「-hanthey」に求める説明は,音韻変化と意味発展の両側面から見ても無理のない解釈であり,その形成過程を捉える一つの可能性として提示し得るだろう。また本稿で示した分析は-hantheyの語源という観点における考察の一助となり,今後通時的資料や地域変異の検討を進めるための基礎的視点を提供するものと考えられる。