表題番号:2025C-039
日付:2026/02/02
研究課題知能と社会的適応との関連の検討
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 文学学術院 文学部 | 教授 | 福川 康之 |
- 研究成果概要
- 知能は,狩りや農耕,競争や協力など,ヒトが生存や繁殖に有利になるように進化した脳の機能である.ただし知能には個人差が存在する.「健常者」(知能指数:IQが概ね85~115のもの)を基準とすると,IQ70未満程度の知能の層は知的障がい者と認定され,自治体から福祉サービスを受けることができる.しかし,この層と健常者の中間にあたる境界知能層にある個人は,この種のサービスを受けられないため,教育や就労上の不利益を強いられている.加えて近年はIQが標準値以上の層(ギフティッド)も,集団生活になじめないといった適応上の問題が指摘されている.本研究ではこれら知能水準が異なる個人が共存できる社会構築に資するための科学的調査を行った.具体的には大学生16名にウェクスラー知能検査(WAIS4)の下位検査である符号(coding)を約6週間の間を空けて2回施行した.次にこの16名が検査者となり,知り合い1人にWAIS4を施行するよう求めた.検査終了後には,検査者および被検査者がそれぞれ検査時のやり取りの円滑さや満足感に関して16項目のConnection During Conversations Scale (CDCS: Okabe-Miyamoto et al., 2024)を用いて評定した.この結果,まず,学生16名の2回の符号問題の成績については,粗点,評価点ともに相関係数0.8以上を示したことから,この成績は個人の知能の指標として安定していることが確認された.他方,16名の学生の1回目の符号の成績と彼らが検査した知り合いの符号の成績の相関係数は,粗点,評価点ともに0.36となり,両者の関連が中程度かつ正であることが明らかとなった.また,16名の学生およびその被検査者のそれぞれのCDCS合計得点の相関係数は0.33となり,両者の関連が中程度かつ正であることが明らかとなった.今後はこれらのデータの詳細を分析し,異なる知能層にある2者関係のコミュニケーションの円滑さや満足感を検討し,国内外の学術研究発表を行う予定である.