表題番号:2025C-020 日付:2026/03/12
研究課題政策の策定・変更の法理論
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 田村 達久
研究成果概要
 政策過程は、政策の計画=策定(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、そして、改善(Action)の4段階に分節されうる。近年では、策定に関してEBPM、すなわち、根拠(エビデンス)に基づく政策策定(Evidence-Based Policy Making)が主張される。もっとも、「根拠(エビデンス)に基づく」ということは、政策の改善段階に相当する政策の変更についても妥当する。日本では、評価の段階に関する法制的対応として、政策の評価の客観的かつ厳格な実施を推進してその結果の政策への適切な反映を図ることなどを目的とする「行政機関が行う政策の評価に関する法律」が2001年に制定されている。EBPMは日本では2016年頃からいわれ始めとされるが、本来のないし本格的なEBPMの導入は進んでいないことも指摘されている(https://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0737.html)。原因は種々あるが、拠るべき根拠の種類や質の多様性が存在すること(https://www.gyoukaku.go.jp/ebpm/img/guidebook1.0_221107.pdfの22頁)や、EBPMで根拠を把握するための典型的方式たるランダム化比較試験(randomized controlled trial)を厳格に実施することは実際には困難であるなどが挙げられよう。また、政策で対処する課題の背景には価値の多元性が存する(『「正しい政策」がないならどうすべきか』(2016年)290~291頁)。したがって、政策の策定・変更にはある種の価値の否定が必然的に伴う。それ故、根拠を踏まえた政策形成(Evidence-Informed Policy Making。EIPM)との主張を否定できない(『日本の政策はなぜ機能しないのか?』(2024年)150頁)。以上のことに鑑みると、政策の策定・変更に係る法制的ないし法理論的な対応としては、EBPM起源国イギリスにもみられる、政策根拠の獲得や政策評価に係る適切な組織の形成・運用とその手続の法制化という組織法的・手続法的対応が妥当といえ、それ故、その理論の深化がさらに要請される。