表題番号:2025C-018 日付:2026/01/27
研究課題ベルギー成年後見法の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 山城 一真
研究成果概要
ベルギー法においては、目下、民法典の全面改正が進行中であるが、これに先立ち、2013年には、成年後見法の現代化を内容とする改正が行われた。この改正について、当職は、若干の研究を行って成果を公表したことがあったが、その後、2018年にさらなる改正が行われる等、さらなる展開がみられた。そのようななか、法務省より「法務資料第470号」としてベルギー成年後見法の翻訳の作成に関する依頼を受けたため、これを契機として、ベルギー成年後見法の研究に再着手することを企図した。
本研究においては、上記法務資料作成のための基礎作業を行ったほか、2018年改正において、包括的な代理権付与・行為能力制限を内容とする旧492/5条が削除された経緯を調査した。ベルギー法は、2013年以降、法定代理権付与の対象となる事項を裁判所がリストから選択する方式(チェックリスト方式)が採用するが、492/5条は、その例外として、王令で定める「自らの財産的利益の管理をしかるべく行う能力が著しくかつ持続的に減退しているとみなされる健康状態のリスト」に該当するときは、管理者に包括的な財産管理の代理権を与えることができるとした(ただし、王令は、その後も未制定のままであった)。この規定が削除された理由は、(1)2013年改正後の実務において、代理権を与えるべき場合を個々に判断することに特段の困難がないことが明らかになったこと、(2)どのような場合に包括的な代理権を与えるべきかを指示することが困難であったこと、(3)重篤な健康状態にあるとの診断を下す医師に対して強大な権限を付与することに対する懸念があったことが指摘される。
このような改正の経緯は、学術研究のみならず、日本法における能力制限・法定代理権付与に関する立法のあり方を考察する際にも、参考となると考えられる。