表題番号:2025C-017
日付:2026/03/27
研究課題不法行為法における過失責任と危険責任/厳格責任—AIに関する民事責任を取上げつつ
| 研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
|---|---|---|---|
| (代表者) | 法学学術院 法学部 | 教授 | 大塚 直 |
- 研究成果概要
- 検討の結果、以下のように、アメリカ法では、厳格責任は、ドイツの危険責任のように、過失責任との区分が明確ではなく、過失責任との連続性も認められる概念であることが示された。アメリカでは、この35年間、厳格責任より過失責任が主流化してきたとされる。もっとも、有害性に基礎づけられた厳格責任は、不法行為法において重要な地位を占めている。厳格責任に対する、矯正的正義論、民事救済論からの批判としては、次の2つの考え方が主張されてきた。第1は、厳格責任を不法行為法から追放する立場である(ゴールドバーク、ジプルスキー)。第2は、厳格責任を過失責任の一形態として吸収する立場である(ジュール・コールマン)。しかし、有力説はこれに対して次の点で反論する。1つは、厳格責任では(事後に)賠償しないことが責任の根拠となるとの考えである。もう1つは、過失責任は、損害のリスクの深刻さに応じて注意義務の程度を調整するものであるのに対し、厳格責任はあらゆる合理的予防措置が講じられているにもかかわらず損害が発生する場合にその損害を被害者に負担させるのは不当なときに用いられるのであり、両者においては、責任の根拠が明確に異なるとする。損害に基づく厳格責任については、3つの特質があることが指摘される。第1は、その不確定性である。第2に、厳格責任の根拠となる正義は、矯正的正義とも分配的正義とも異なる「互恵的正義」であることである。第3に、過失責任においては行為の不法に重点が置かれるのに対し、厳格責任では、その責任主体が加える損害に対して有する支配力に重点がおかれることである。過失責任では、被害者に十分な配慮をせず不合理な行為をした場合に責任を課するのに対し、厳格責任では、損害を最小化するために最も合理的な立場にある者に責任を課するのである。