表題番号:2025C-014 日付:2026/03/27
研究課題近世・近代裁判関係史料に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 和仁 かや
研究成果概要

近世の裁判史料、就中江戸幕府の裁判記録は、幕末維新期の混乱や関東大震災によるダメージを被りながらも、刑事裁判記録である『御仕置例類集』を筆頭に、その主たる部分は今日に伝わり研究資料として活用されてきた。多くは既に翻刻・公刊されているが、これがさらに進めば、法制史学や近世史学分野での研究のみならず、他の隣接分野や一般からの関心からも広くアプローチすることが可能となり、ともすれば未だ誤解されがちな近代以前の日本における裁判システムの、より正確な理解が促進されることにもなろう。

 本研究ではかかる問題意識から、資料の調査と蒐集をさらに進め、それらの翻刻や公表と同時に分析をも行い、科学研究費研究課題(基盤(C))「近世債権法史の再検討―九州大学所蔵資料を手掛かりとした研究基盤の再構築―」とも併せた基礎的作業を通じて、より立体的な近世法理解やそのための基盤構築に努めようとするものである。

 2025年度は主に以下の3点を実施した。第一には、『御仕置例類集』に象徴的に表れている法的思考を、関連資料の紹介も含めて一般向けに分かりやすく解説した書籍『江戸の刑事司法―「御仕置例類集」を読みとく―』を執筆・刊行した。第二に、前述した科学研究費研究課題について、前年に執筆・公表した中括的論考「九州大学法制史料―九州帝国大学法文学部の学問基盤―」での成果やこの過程で明らかとなった知見に基づき、対象史料の分析や整理を進めた。取りまとめたデータは近日中に公開を予定している。第三に、第二に記した研究課題との関係からも関わってきた、近世〜近代法制史学の先学による裁判史料および研究資料の調査・収集、さらには保全や分析作業にも従事した。これらについてはwork in progress的な報告を行い、他分野からも様々な示唆を得たので、次年度も引き続き紹介や知見の公表に努めていきたい。