表題番号:2024R-062
日付:2025/04/06
研究課題デスクトップファブリケーション可能な疎な電極による液体駆動技術の原理解明アプローチの探索
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 基幹理工学部 | 教授 | 岩瀬 英治 |
- 研究成果概要
- 本特定課題の目的は,銀ナノ粒子インクを薄膜フィルム上にインクジェット印刷して得られた電極を使用し,液滴駆動の評価である.電気的な液滴駆動方法の原理としては,エレクトロウェッティング(Electrowetting on dielectric, EWOD) が用いられることが多い.EWODを利用した液滴の制御は試薬の合成,ディスプレイや可変焦点レンズなどに応用されている.EWODによる液滴駆動には,高い電界強度が必要であるため,液滴サイズより狭い電極間隔を有する密な電極配置とすることが一般的である.一方で,我々はフレキシブルプリント基板を用いかつ下部の電極基板のみの構成で液滴サイズより広い電極間隔を有する疎な電極配置の印刷配線で液滴が駆動できることを示した.そこで本特定課題では薄膜フィルム上へのインクジェット印刷された電極を用いた電気的液滴駆動特性を評価するために,電極上と電極間の液滴の接触角計測を行った.
試験デバイスの製作に関しては,電極は幅1 mmの線を15 mmの間隔でインクジェットプリンタで,銀ナノインク(Mitsubishi Paper Mills Limited NBSIJ-MU01)を用いて印刷した.基板は厚さ135 μmの透明PETを用いた.電極上の絶縁層には厚さ10 μmのポリエチレンのフィルムを用い,フィルムと電極間およびフィルム上に低粘度のシリコンオイルを塗布した.また,液滴には純水を用いてマイクロピペットにより300 μLの一定量を電極上に配置した.一度液滴に上部電極を刺した後に,抜いた状態と刺し続けた状態での,下部電極に電圧を印可した際の接触角の差を評価した結果,接触角の差がほとんど見られなかったことから,上部電極を抜いた状態でも電位が保持されているが示唆された.
また,15mmの電極間隔の真ん中に液滴を置いた場合において,液滴を一度0Vとした後に上部電極を抜き,2つの下部電極に0Vを印可した際には59°であった接触角が,200Vを印可した際には48°となり,疎な電極においても大きな接触角変化が得らえることが明らかとなった.