表題番号:2024R-052 日付:2025/04/04
研究課題ファノ多様体を特徴づける対数的ログシンプレクティック構造の退化因子の特異点
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 奥村 克彦
研究成果概要

代数多様体上の2-ベクトル場がスカウテン括弧に対して、を満たすとき、ポアソン構造であるという。ポアソン構造はシンプレクティック形式に退化を許すような一般化であり、実際、シンプレクティック形式に対応する非退化なポアソン構造が存在する。

ポアソン構造の問題を立てるとき、許容する退化に制限をかけるという視点がある。実際、R. LimaJ. V. Pereira2014年の論文以下[LP14]では、退化因子にSNC特異点のみを許容し、その結果、射影空間の特徴付けを与えている。SNC特異点は各既約成分が滑らかであり、その交わりもまた滑らかであるという性質がある。つまり、最も非特異に近い種類の特異点のみを許容している。この制限を緩めることで、新しいポアソン多様体を構成することが期待できる。

本研究では、[LP14]をスタックの場合へ一般化することを試みた。要するに、V-NC特異点を退化因子に許容した場合、どのようなスタック上に存在し得るかを考えようとした。スタックとは代数多様体の一般化であるスキームのさらなる一般化である。筆者はすでにこのスタック上でもポアソン構造を定義できることを確認している。

重み付き射影空間というスタック上のポアソン構造については、申請の前に具体例を計算していた。今年度は偽重み付き射影空間というある種のトーリックの性質を持つスタック上でポアソン構造の構成を試みた。W.Buczynskaのプレプリント http://arxiv.org/abs/0805.1211v1に偽重み付き射影空間の具体例があり、その具体例に対して、ポアソン構造の構成を試みた。