表題番号:2024R-022
日付:2025/03/06
研究課題人的資本の社会的価値創造に関する研究:CSV活動と経営効率の実証分析
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 創造理工学部 | 講師 | 岩本 大輝 |
(連携研究者) | 東京富士大学 経営学部 | 准教授 | 高田 真也 |
(連携研究者) | 群馬大学 情報学部 | 准教授 | 王 緒 |
- 研究成果概要
- 近年,企業の持続可能性に対する関心が高まる中,経営の核となる人的資本マネジメントの重要性が注目されている.本研究課題では,経済価値と社会価値を同時に創出するCreating Shared Value(CSV)活動が,従業員の人的資本および経営効率にどのような影響を及ぼすかを評価した.まず,多様性や障がい者雇用といった持続可能経営の領域において,障がい者雇用支援サービスを提供するA社の顧客企業を対象にアンケート調査を実施した.分析の結果,障がい者雇用の導入と促進が企業内の多様性に対する役員・従業員の理解を深め,障がい者と一般従業員間の交流を活性化し,職場全体の満足度向上に寄与する可能性が示された.次に,労働者に対するオンライン調査を行い,CSV活動の促進にはCSV教育の充実が有効であること,および戦略的人的資源管理(SHRM)が人的資本や職場環境の質的向上を通じてCSV成果を生み出すメカニズムを明らかにした.他方,SDGsや持続可能性など特定領域ではCSV教育が進展しているものの,SHRMについては全体の約半数の企業しか実施されておらず,人的資本の潜在的効果がまだ十分に活かされていないことを明らかにした.最後に,経営の効率性評価において新たな視点を提供可能な手法を提案した.従来のDEAモデルは比率データに対して対応困難で,特に負のデータを適切に扱えない問題があった.比率データに対応可能なDEA-Rモデルが提案されているが,非放射仮定においては経営比率データに多い負のデータを適切に扱うことができる手法がないという問題があった.この問題を克服するため,新たなDEA-Rモデルを提案し,日本の銀行業界データを用いて有効性を検証した.これらの研究成果は,国内外学会発表および国内学会誌への投稿を通じて報告を行った.