表題番号:2024R-019 日付:2025/04/24
研究課題強度と靭性を両立する異種接合の学理構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 細井 厚志
研究成果概要

輸送機器構造を軽量化し燃費向上させる目的で,異種接合技術の開発が行われている.異種接合材の界面特性を評価する技術はこれまで数多く検討されてきた.特に異材界面のき裂先端における線形弾性論に基づく厳密解は応力場,変位場が振動することや,特別なケースを除きモードI及びモードII応力拡大係数が分離できないことが指摘されている.そこで,異材界面のき裂進展特性を評価する場合にはモードIとモードIIの比(Phase Angle)がき裂進展特性を特徴づけるパラメータとして広く用いられている.そこで,本研究ではCrack Tip Element法を拡張し,シングルラップジョイント特有の曲げ変形,及び接合時に生じる熱残留応力の影響を考慮し,接合界面のき裂進展に伴うエネルギ解放率をモード分離して閉形式で導出し,接合強度特性を評価することを目的とした.提案したモデルによる解析結果と実験結果は良い一致を示した.また解析の結果から,モードIまたはモードII臨界エネルギ解放率のどちらか一方を向上させても,モードIまたはモードIIのどちらかの破壊条件を満たしてしまうため,シングルラップジョイント試験における接合強度向上には大きく寄与しないことを明らかにした.本研究では金属表面のナノ構造の違いで接合強度に違いが生じた.多段のナノ構造は,大きなクレーター内側にも微細なナノ構造があり,アンカー効果が高まり,モードI及びモードIIの両方の破壊靭性向上に寄与し,見かけの接合強度が向上したものと推察される.