表題番号:2024R-018 日付:2025/06/17
研究課題多様性の決定要因と効果の解明:社外取締役・M&A・機関投資家を用いた実証研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 大学院経営管理研究科 教授 内田 交謹
(連携研究者) Tokyo Keizai University Hyonok Kim
(連携研究者) Inha University Jungwon Min
研究成果概要
本プロジェクトでは、4つの研究課題に取り組んだ。

第一に、日本企業の経営者業績予想について分析し、当期の直近の業績予想を達成できなかった経営者が,翌期について市場で期待される水準よりも強気な予想を公表する傾向にあることを明らかにした。当期の業績が未達の場合も,強気な経営者予想に対して株価は正の反応を示すことも明らかにしている。ただし、機関投資持株比率と女性取締役が経営者によるこれらの印象マネジメントを弱めることを示している。洗練された投資家や男性に比べて倫理的な行動を重視する女性が経営者予想の情報の質を高めることを示唆している。本論文を Review of Managerial Science に公刊した。

第二に、コーポレート・ガバナンス改革と株式価値の関係について実証分析を行い、2014年のスチュワードシップ・コード策定以降、株主還元の大きな銘柄が高い株式リターンを生んでおり、このプレミアムを反映して企業も株主還元を増やす傾向にあることを示した。また機関投資家も高株主還元銘柄へのポートフォリオ・ウェイトを高めていることを明らかにした。一方社外取締役の増加については、株式リターンへの効果が明確には観察されなかった。本研究の一部を現代ファイナンスに投稿し、改訂依頼を受けている。また研究全体を国際学術誌に投稿予定である。

第三に、法人企業を筆頭株主とする企業は機関投資家を主要株主とする企業に比べて株主還元、特に自社株買いを少なくすることを明らかにした。Research in International Business and Finance に再投稿中である。

最後に、日本企業の取締役会データ、特に社外取締役、女性取締役データを用いて人材の多様性を示す変数を作成した。今後この変数を用いて、多様性の決定要因と効果を分析する予定である。